医療法人水ノ江医院 内科・小児科・血液内科・緩和ケア内科

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2型糖尿病まとめ

<このページは最新情報が入り次第、随時更新していきます>

糖尿病の治療薬に関するまとめはこちら

 

「糖尿病」ってどんな病気でしょうか?
おしっこが甘くなる病気?
甘い物を食べ過ぎたらなる病気?
結局、糖尿病になったら何が問題なの?
意外と知らない糖尿病に関して書いてみたいと思います。

 

我が国の糖尿病患者は、強く疑われる人が約700万人、可能性を否定できない人を含めると約1400万人と推計されています。糖尿病はひとたび発症すると治癒することはありません。発症の予防・早期発見が重要です。

 

糖尿病と深く関わるホルモンがインスリンです。
インスリンは血糖値を下げるホルモンとして有名です。
食後に血糖値が上がると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。
インスリンが全身の様々な細胞に作用し、細胞は糖分を細胞内に取り込みます。
糖分はエネルギー源として利用されますが、余った分は脂肪などに変換されて蓄えられます。
つまり、インスリンは血糖値を下げるというよりは、体に栄養を取り込むためのホルモンということです。

糖尿病とは、インスリンの作用不足により慢性的な高血糖状態となる病気です。
糖尿病には1型と2型があります。
1型糖尿病は主に免疫の異常により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる病気です。
お子さんに多い病気で、発症のピークは思春期と言われていますが、成人でも発症する場合があります。

2型糖尿病は生活習慣の乱れにより発症する病気です。
食事をいっぱい摂ると、その分インスリンがどんどん分泌されます。
そして、余計に取り込まれた栄養分は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられていきます。
つまり、肥満になるということです。
脂肪が蓄積すると、血糖を上手く細胞に取り込めなくなる事が知られています。
結果として、インスリンはたくさん分泌されているのに、血糖値が下がりにくくなります。
これを「インスリン抵抗性」と言います。
こうなると、血糖値が高い状態が続いてしまいます。

 

尚、米国糖尿病学会では1型、2型という呼び方はやめて、5種類に分けることが提唱されています。

・SAID(Severe Autoimmune Diabetes)

・・・1型糖尿病、成人潜在性自己免疫性糖尿病に相当。抗GAD抗体が陽性で、免疫の異常で膵臓のβ細胞が破壊される。

 

・SIDD(Severe Insulin-Deficient Diabetes)

・・・インスリン分泌障害、インスリン抵抗性があり、肥満は少ない。自己抗体は陰性。

 

・SIRD(Severe Insulin-Resistant Diabetes)

・・・肥満で、重度のインスリン抵抗性が特徴。インスリンの分泌は保たれている。

 

・MOD(Mild Obesity-Related Diabetes)

・・・肥満はあるけれど、インスリン抵抗性は軽度。比較的若い年齢で罹患する。

 

・MARD(Mild Age-Related Diabetes)

・・・最も多い。高齢になってから発症し、加齢に伴う変化により血糖値が上昇する。

 

インスリンは膵臓で作られているのですが、無限に出てくる訳ではありません。
特に日本人はインスリンの分泌が低下しやすいと言われています。
欧米には日本では考えられないほどひどい肥満の人たちがいます。
日本人はあそこまで太る前に糖尿病になってしまうという訳です。
また、日本人の中でも糖尿病のなりやすさには体質が影響しています。

 

インスリンの分泌が低下してくると、体は糖分を取り込めなくなります。
その結果、血糖値は更に高くなり、体は痩せていきます。
つまり、糖尿病を治療しないでいると、一度太り、そして痩せていきます。
体重は減りますが、糖尿病は悪化しているのです。

 

糖尿病になってしまう原因はなんでしょうか?
糖尿病というと甘い物を食べ過ぎると発症すると思いがちです。
「糖尿病」という名前からそう思ってしまうのも無理はありません。
しかし、実際には食べているものが甘いかどうかは関係ありません。
糖尿病は摂取する栄養分(カロリー)が多いと発症します。
お菓子などの甘いものはカロリーが高いことが多く、糖尿病の原因になりやすい食品ではあります。

 

糖尿病になると何が問題なのでしょうか。
血糖値が高い状態が続くと、血管の内側の細胞がダメージを受けていきます。
血液中の余分な糖分は血管内皮細胞に入り込み、細胞を刺激して活性酸素が産生されます。
そして、活性酸素により血管内細胞が傷害されてしまいます。
その結果、全身の血管が傷つき、様々な臓器に影響が出てきます。
これこそが糖尿病の問題です。
尿中に糖が出るのは血糖値が高いことを反映しているだけで、それ自体は問題ではありません。

 

ダメージを受ける血管を大きく分けると大血管と細小血管に分けられます。
大血管は主に脳、心臓、足の血管です。
それぞれ脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症の原因となります。
細小血管は主に眼、腎臓、神経の血管です。
それぞれ糖尿病性網膜症、腎症、神経障害の原因となります。
その他にも足の障害や歯周病、認知症も増える事が知られています。

 

糖尿病になるとどのような症状が出るのでしょうか。
実際のところ、初期には全く症状はありません。
症状がなくても血管のダメージはどんどん進んでいきます。
これが糖尿病の恐ろしいところです。
糖尿病が進行してくると喉の渇き、飲水量の増加、尿量の増加を認めるようになります。
さらに悪化すると体重がどんどん減るようになり、嘔吐やだるさなどを認める場合があります。
血管のダメージは元に戻ることはありません。
症状が出る前に治療を開始する必要があります。

 

糖尿病の病状の評価にはHbA1cという数値を用います。
HbA1cとは赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)のうち、血液中の糖と結合しているものの割合を表したものです。
赤血球が全身の血管を通って循環するうちに、血糖が結合していきます。
なので、血糖値が高い人ほどHbA1cの数値が高くなります。
赤血球の寿命は約120日間と言われており、日々徐々に入れ替わっています。
そのため、HbA1cは過去1〜2ヶ月の状態を反映すると言われており、当日の食事の影響は受けません。
注意点としましては、貧血の方などは赤血球の寿命が短くなっており、HbA1cの数値が低くなってしまいます。
そのため、グリコアルブミンなど別の指標を用いる必要があります。
治療の目標は年齢や持病などにより異なります。
若い人は厳しめに、高齢の方などは厳しくすると低血糖のリスクが上がりますので、緩めに管理していきます。

 

糖尿病の食事療法はどのようなものでしょうか?
誰しも出来れば薬は飲みたくないものだと思います。
食事や運動の習慣を見直すことで、糖尿病の予防や治療を行うことができます。
一番大事なのは摂取カロリーを適切な量にコントロールすることです。
肥満がある場合は体重を落とす必要があります。
その上で、バランスよく栄養を摂るのが理想です。

 

まず、ご自身にとって適正な摂取カロリーを計算しましょう。
計算するのに必要なのは、目標体重とエネルギー係数です。
目標体重は[身長(m)]^2*22で計算できます。
例えば、身長160cmだったら56.3kgになります。
65歳以上の人は[身長(m)]^2*25まで大丈夫です。
例えば、身長160cmだったら64kgまで大丈夫ということです。
この目標体重にエネルギー係数を掛け算すると摂取カロリーが計算できます。
エネルギー係数は日中の運動量で変わります。
運動量が少ない人・・・ほとんど座って過ごす人は25〜30です。
運動量が普通の人・・・座っていることが多いけれど通勤・家事・軽い運動がある人は30〜35です。
運動量が多い人・・・力仕事や活発な運動をしている人は35以上です。
完璧なカロリー計算はできませんが、食事量のイメージを掴むことが大事です。

 

食事の管理だけでなく、運動をすることも治療に繋がります。
目標としては、できるだけ毎日、少なくとも週3〜5回は運動したいところです。
ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動と、腕立て伏せや腹筋などのレジスタンス運動を組み合わせるのが理想です。
とはいえ理想通りの運動を目指しても挫折してしまっては意味がありません。
如何に短時間でもやらないよりはやった方が良いです。
特に水泳や水中ウォーキングなどは膝への負担もなく、効果が高いのでオススメです。

 

食事や運動だけでうまくいかない場合にはお薬が必要かもしれません。
血糖値を下げる薬や、注射などを組み合わせて治療していきます。
病状によって適切なお薬は異なりますので、医師に相談してください。